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仁徳天皇陵含む百舌鳥・古市古墳群が世界文化遺産国内候補に

2017/08/01
文化審議会は7月31日、平成31(2019)年の世界文化遺産登録を目指す候補として、大阪府の「百舌鳥(もず)・古市古墳群」を選んだ。来年2月までに政府が国連教育科学文化機関(ユネスコ)に推薦書を提出し、31年夏のユネスコ世界遺産委員会で審査を受ける見通し。
201707311834_1.jpg日本最大の仁徳天皇陵古墳など百舌鳥古墳群=堺市(本社ヘリから、宮沢宗士郎撮影)

百舌鳥・古市古墳群は堺市の百舌鳥古墳群と、大阪府羽曳野、藤井寺両市に広がる古市古墳群の総称。古墳群は、国内最大規模の「仁徳天皇陵古墳」(堺市、全長486メートル)や応神天皇陵古墳(羽曳野市、全長425メートル)をはじめ、古墳時代最盛期の4世紀後半~5世紀後半に築造された49基で構成する。全長200メートルを超える前方後円墳は全国に約40基あるが、11基が立地する。

堺市など地元自治体は、古墳群について「天皇陵を中心に約1600年前の姿を今に伝えている」などととして推薦を求め、これまでに25、27、28年の3度、文化審議会で審議されたが、いずれも見送られていた。

このため、今回は「仁徳天皇陵古墳」をはじめ、大小さまざまな形が存在する古墳群は他に例がないとする「多様性」をアピールしたことが結果に結びついたとみられる。

この日の文化審議会では「北海道・北東北を中心とした縄文遺跡群」(北海道、青森、岩手、秋田の3県)、「金を中心とする佐渡鉱山の遺産群」(新潟県)の2件も審議対象とされたが、今回は見送られた。

ユネスコ機関の調査…残されたハードル 過去には「不登録」の例も

百舌鳥・古市古墳群は、世界文化遺産登録を目指す国内推薦を選定する文化審議会からこれまで3度、推薦を見送られており、“4度目の正直”となった。過去の「落選」の反省を踏まえ、今回初めて大小さまざまな形が存在する古墳群の「多様性」をアピールしたことが功を奏し、文化審は「顕著な普遍的価値として視覚的に理解されやすい」と評価。ただ、登録までには、ユネスコ諮問機関の現地調査など、まだいくつものハードルが残る。

国内推薦に選ばれると、国は来年2月までに、古墳群が持つ優れた価値について、外国人にも理解しやすいように解説した推薦書を作成しユネスコに提出。来年夏から秋ごろ、ユネスコ世界遺産委員会の諮問機関「イコモス」による現地調査があり、評価結果は同委員会に勧告される。この際に「不登録」と勧告されても委員会の審査を受けることはできるが、イコモスと委員会の双方から「不登録」と評価された場合は、二度と世界文化遺産に応募することはできない。

このため、平成25(2013)年の登録を目指しながら、イコモスから「不登録」を勧告された「武家の古都・鎌倉」(神奈川県)は、委員会での不登録を恐れ、いったん国内推薦を取り下げている。

堺市世界文化遺産推進室の担当者は「大小さまざまな形の古墳が存在する古墳群の『多様性』は海外からも評価されるはずだ。不登録になるとは考えていない」と自信をのぞかせる。

審査が順調に進めば、最終的に31(2019)年7月ごろに登録の可否が決定される見通しだが、文化審は31日の記者会見で「イコモスの評価次第では、推薦を一時取り下げる場合もある」と指摘しており、登録までには曲折も予想される。

「第一歩を踏み出せた」吉報に関係者ら笑顔

「百舌鳥・古市古墳群」の世界文化遺産登録に向けた31日の国内候補決定を受け、大阪府庁で吉報を待っていた関係者らは「第一歩を踏み出せた」と喜びをかみしめた。

この日は午後4時ごろに府庁の「正庁の間」に関係者約70人が集合。松井一郎知事のほか堺市の竹山修身(おさみ)市長、世界遺産登録を応援する府民会議の会長を務める尾崎裕・大阪商工会議所会頭らも顔をそろえた。

文化庁から連絡を受けた後、松井知事が「百舌鳥・古市古墳群が国内推薦の候補に決定しました」と報告すると、待ちに待った吉報に会場から割れんばかりの拍手が起こった。

笑顔であいさつに立った松井知事は「支援をいただいたすべての人のおかげだが、これは第一歩。正式に登録された折に、みなさんとともに全身で喜びを表現したい」と述べ、万歳をあえて“封印”。続いてあいさつした竹山市長も「まずは喜びたい。しかし、昨年の悔しさを忘れてはならない。その思いを持って本来の登録までがんばりたい」と気を引き締めた。

 府民会議の発起人の一人でもある上方落語協会会長の桂文枝さんは、今後の世界文化遺産への登録について「私は絶対大丈夫だと思っている。こんなにうれしいことはない」と笑顔。「世界遺産になった富士山に登って、『(古墳群が)何とか世界遺産の代表になるように』とお願いを申し上げてきた。それが通じたんだと思います」と会場を沸かせた。

「この1年間長かった」 堺市でも喜びの声

201708011151_1-300x0.jpg万歳して喜ぶ関係者と堺市のキャラクター「ハニワ課長」(左から3番目)=31日、堺市役所

「もう、この気持ちを爆発させないと、頭がおかしくなりそうです」―。

堺市役所高層館21階展望ロビーで開かれた報告会では、田村恒一副市長が興奮しながら結果を告げると、集まった市民ら約300人から大きな拍手がわき起こった。その後、関係者らがくす玉を割ったり、万歳三唱したりして、喜びを分かち合った。

古墳群のPRを進めてきた、市内の企業などでつくる「市民の会」会長の前田寛司・堺商工会議所会頭は「(昨年候補を逃してから)この1年間、長かった。最高の気分です」と感極まった様子で話した上で、会員数を現在の4倍となる8万4千人を目指すと宣言。「もう一度地面に足をつけて、これからが勝負。登録を目指して前進していきたい」と意気込んだ。

一方、田村副市長は「高いハードルを越えられたのは、たくさんの方々のご支援のおかげ。明日から堺への来訪者は増えるだろう。対応する施設の整備を早急に進めていきたい」と話した。

ハニワ課長喜び語るも、引退示唆

201708011151_2-300x0.jpg報道陣の取材に応じるハニワ課長=堺市役所

百舌鳥・古市古墳群をPRする堺市のキャラクター、ハニワ課長は31日、市役所で記者団の取材に応じ、「言葉がなくなるぐらいうれしい」と国内推薦に選ばれた喜びを語る一方で、「こんなハニワがユネスコに通用するとは思えない」として“引退”も示唆した。

企業を回ったり、関連イベントに参加したり、市内各地にポスターをはったりと、積極的にPR活動を行ってきたハニワ課長。「ポーカーフェースなんであまり伝わらないと思うが、やったという気持ちはある」と話した。

一方、今後の活動については「こんな低レベルのクオリティーで、天皇陵の尊厳を損ねないのか、ユネスコに通用するのか心配」とした上で、「私個人としては、もうそろそろふるさとに帰ってもいいのかなと思っている。関係の方々と相談していきたい」と話した。

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