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「奇跡の生存物語」訪日客へ伝えたい 被爆体験の外国語絵本、広島の女性グループ作製

2017/07/27
昨年5月のオバマ前米大統領の広島市訪問後、外国人来館者が過去最多を更新した原爆資料館(広島市中区)。その見学の合間などに被爆の実態を分かりやすく伝えることができる一枚ものの外国人向け絵本を、地元の女性グループが作製した。幼い頃に被爆し、奇跡的に生存した少年が勉学に励み、立派に成長するまでの物語を、被爆証言に基づき描いた。まずはスペイン語版と中国語版が完成。今後は英語版やドイツ語版のほか、本格的な絵本化も計画している。

絵本はA4判シートの表裏に計12点の絵と文を添えた。手掛けたのは、原爆資料館で外国人を案内するヒロシマ・ピース・ボランティアの中越尚美さん(54)。平成27年、通訳者として参加したイベントで、東広島市の飯田國彦さん(75)の被爆証言に感動。広島で外国人に日本語を教える女性5人に呼びかけ、昨年末、「平和の大切さを伝える教材をつくる会」を結成、絵本作りを進めてきた。

201707262105_1.jpg飯田國彦さん(左)を招いて絵本を作る中越尚美さん(右から3人目)ら女性グループ=広島市内

感動証言きっかけ

オバマ氏の広島訪問で昨年度の原爆資料館の来館者数は前年度比16%増の174万人、うち外国人も8%増の37万人と、いずれも昭和30年の開館以来、最多を更新した。今も館内は頻繁に混雑や渋滞が発生。来館者を先へ流すために、案内役のヒロシマ・ピース・ボランティアに活動休止が指示されることもある。

「これほど多くの外国人が来ているのに、ただ流して見るのでは本末転倒…」と中越さん。そんな思いが絵本化を後押しした。

物語は、飯田さんが3歳で被爆、家族を亡くして祖母に引き取られ、めまいや貧血などに苦しむ中、奇跡的に生存。ランドセルを買ってもらい、教員にも励まされて勉学に励み高校を卒業。後に三菱重工の技手やグループ会社の支店長などを歴任した生涯のエピソードをまとめた。

表現分かりやすく

201707262105_2.jpg完成した一枚もの絵本のスペイン語版。表裏に絵と文がある

絵本化の作業では、証言で出てくる「がれき」などの言葉を、外国人に理解しやすいように「畳、はし、コップが飛んだ」など、具体的な表現に置き換えた。

会のメンバーで、日本語教師の森下幸子さん(64)は「読む途中いちいちつまずいて辞書を調べていると内容が頭に入らない。感動的な証言なので、すんなり理解できる文を心掛けた」と話す。絵は、イラストを勉強している広島在住の女性に依頼した。

完成した絵本に飯田さんは「うまくまとめてあり、すばらしい。原爆の惨状を伝えるのはとても難しい。私の場合は『奇跡の生存』と言われたが、一方で頑張っても生存できなかった人がたくさんいることを、絵本を通じて考えてほしい」と話す。

中越さんは原爆資料館を訪れる外国人に読み聞かせなどを計画。「外国人の理解を助け、さらに原爆の惨状を知るきっかけとなれば」と意欲をみせている。

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