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有名観光地に飽きた中国人富裕層がマイナースポット「富田林寺内町」に押し寄せるワケは? 

2017/07/26
201707251839_1.jpg江戸時代の風情が残る大阪府富田林市の「富田林寺内町」。府内唯一の「重要伝統的建造物群保存地区」で、有名な観光スポットに飽きた中国人富裕層たちが押し寄せているという

訪日外国人の関西の人気観光地といえば、伏見稲荷大社(京都市伏見区)や梅田スカイビル(大阪市北区)などが有名だろう。そんなスポットに行き尽くした中国人富裕層たちの間で今、江戸時代の街並みが残る大阪府富田林市の「富田林寺内町」が評判になっているらしい。大阪府内では唯一の「重要伝統的建造物群保存地区」ではあるが、観光地としての知名度は伏見稲荷大社などと比べるとはるかにマイナーな存在。失礼ながら、地元の大阪府民の知名度もそう高くはないローカルスポットに、中国人富裕層が大挙して訪れるワケを探ってみると…。(藤崎真生)

大阪府民も「知る人ぞ知る」 府内唯一の保存地区

201707251839_2-300x0.jpg「中国人富裕層を連れて行ってはずしたことはない」。訪日外国人向けの旅行会社を経営し、近年人気スポットになっている大阪府富田林市の「富田林寺内町」について語る水谷浩さん=大阪府吹田市

「ここに招いてはずしたことはないですよ」

富田林寺内町について、そう太鼓判を押すのは訪日外国人向けの旅行会社「彩里旅遊」(本社・大阪府吹田市)を経営する水谷浩さん(59)だ。

彩里旅遊の顧客は華僑や中国人富裕層の会社経営者らが多く、年齢層のメーンを占めるのは30~60代。1人から最大で10人程度の少人数のツアーを企画し、団体ツアーでは得られないきめ細やかなサポートで、顧客を獲得している。

水谷さん自身が中国人富裕層たちのガイドを担当しているが、関西各地のツアーの中でも富田林寺内町の評判が抜群なのだ。

顧客として訪れたある中国の銀行幹部の妻は「『映画のセット』ではなく、何百年も前の木造の街並みがそのまま残っている。しかも、そこに人が実際に住んでいるのが素晴らしい」と感嘆した。

別の顧客も「保存状態が素晴らしい」と語った。中国人にとって、時の政府の保護を受けるのではなく、一般の個人の住宅が昔のままの姿で残っていることが新鮮なのだ。

「京都や奈良は知っているが、大阪の中心部から、こんな近くにこれだけ素晴らしい場所があるなんて知らなかった」といった声もある。

ほかに人気スポットは…

富田林寺内町は戦国時代、京都・興正寺の僧・証秀によって創建された「興正寺別院」を中心とした宗教自治都市として誕生し、江戸時代に商業都市として発展した。今も東西約400メートル、南北約350メートルほどのエリアに国重要文化財「旧杉山家住宅」をはじめ重厚な町家が数多く残り、平成9年には国の「重要伝統的建造物群保存地区」に選定された。

地区内の観光施設として18年4月につくられた「市立じないまち交流館」の入館者数は開館初年度で、約1万6700人。28年度は約3万3700人と当初に比べると倍増しているが、観光地としてはマイナーな部類に入ることは否めない場所だ。

富裕層の人気を集めているマイナースポットは富田林寺内町だけではないようだ。

かつての門前町で多くの石塔や石仏がある「化野(あだしの)念仏寺」を抱える京都市の嵯峨鳥居本地区、かやぶき屋根の集落が残る京都府南丹市・美山町地区、舟の格納庫「舟屋」がずらりと並ぶ同府伊根町の「舟屋集落」が人気という。

どの地域も国の重伝建地区で古い建築物が数多く残されているなど富田林寺内町と共通する部分がある。

中国では、古い建築物は王朝が変わるたびに〝スクラップ・アンド・ビルド〟で消えることが多い。前王朝のものを徹底的に否定、破壊する「断絶の歴史」だけに、古くからの暮らしを丁寧に守り続ける富田林寺内町の人々の暮らしが眼前にそのまま残っているところが新鮮に映るのかもしれない。

普段着の日本文化

201707251839_3.jpg大阪府富田林の「富田林寺内町」の一角。昔の雰囲気を漂わせる重厚なつくりの民家が今も残る

富田林寺内町が中国人富裕層の注目を集めているのは、ハード面の魅力だけではない。

短時間で日本の伝統を堪能できるだけでなく、何よりも団体ツアーでは得られない「地元住民との交流」ができる点が人気の理由だという。京都や奈良のような有名な観光地ではないがゆえに、住民の日常生活が息づく「普段着の日本文化」の雰囲気を味わうことができるという魅力があるのだ。

大阪観光局によると、平成26年に大阪府を訪れた中国人観光客は100万9000人。その後、27年は271万6000人、28年は372万9000人と年々増加している。大阪観光局も「今後も中国人観光客の数は『右肩上がり』で伸びるだろう」と分析する。

リピーターも増える中、水谷さんのもとには、ガイドブックなどで大々的に特集される有名どころの観光地を行き尽くした富裕層から「ほかに面白いところは?」というリクエストも多く寄せられる。富田林寺内町は、そうしたニーズにも応えられる観光地なのだろう。

特に富裕層の心をとらえているのが地元住民との交流。有名観光地のようにひっきりなしに観光客が行き来することがないこともあってか、きさくな地元の人たちが、観光客とのやりとりに気軽に応じてくれる。

実際、街角で出会った男性住民に水谷さんのガイドする富裕層の客が「この家に、あなたの一族は何年くらい住んでいるのですか」と問いかけたときも、「200年くらいかな。でも向こうの家は300年くらいやで」と応じてくれた。

素朴なやりとりだが、実は、こうした素朴なふれあいが富裕層にとって新鮮なことだという。

外国人観光客が日本の観光地を訪れても、プロのガイドから話を聞くことはあっても、実際にその地で暮らす地元の人とやりとりをする機会はほとんどないからだ。

実は空き家対策も深刻

201707251839_4-300x0.jpg「外国人の注目を集めるのは非常に良いこと」と語る佐藤康平さん。「LLPまちかつ」の代表として「富田林寺内町」の活性化に取り組んでいる=大阪府富田林市

中国人富裕層から絶賛される富田林寺内町だが、少子高齢化を背景に空き家が増えているという悩みも抱えている。

市によると、富田林寺内町の地域には全体で約610棟の建物がある。実はこのうち約1割は空き家だ。

地元有志らは「LLPまちかつ」を平成21年9月に設立。空き家への入居希望者と持ち主との仲人的な役割を果たし、入居者を増やそうと試みている。ただ、同団体の中でも代表の佐藤康平さん(74)が「若手になる」というから、その高齢化は深刻だ。

「まちかつ」の活動などもあって、ここ数年で、地域には、飲食店やギャラリーなど約50軒の店舗が誕生し、成果が目に見えるようになってきた。しかし、店舗は増える一方で、居住者がなかなか増えない。

佐藤さんは、町を維持していくためには、多少騒がしくなっても観光地化を進める必要があると考えている。現在、富田林寺内町にある宿泊施設は女性限定の1軒のみ。中国人富裕層の注目も集まっていることから、佐藤さんは「今後3年以内を目標に、空き家を改修することで、男性でも女性でも宿泊できる施設を作っていきたい」と力を込める。

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