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高級バスツアーの人気定着、競争激化 富裕層シニア獲得のカギは?

2017/07/29

通常45人乗りの観光バスの座席数を大幅に減らし、足を伸ばし優雅な気分に浸れるようにする。そんな極上のバスツアーが60~70代を中心としたシニア層で人気を呼んでいる。この分野で攻勢を強める大手旅行会社がクラブツーリズム(本社・東京都新宿区)だ。2007年秋に運行を始めた最上級バス「ロイヤルクルーザー四季の華」が今夏に10周年を迎えたのを機に、1日に新型車の運行を始めた。実際に乗車し、高級バスツアー戦略を探った。

201707201037_1-300x0.jpgクラブツーリズムの新型高級バス「碧号」の車内=6月、東京都千代田区

「移動を安らぎに」

「旅の移動時間や空間を最上の安らぎに変える」というコンセプトで設計されたのが、ロイヤルクルーザー四季の華だ。観光地をつなぐ単なる移動手段としてではなく、「乗ることそのものが快適空間」と実感してもらえるバスを目指したという。

初代「風号」は07年にデビュー。改良を重ね昨年には日本を代表する建築家の隈研吾氏が車内デザインを監修した「海号」を、今年4月には「空号」を導入した。新たに加わる「碧(あおい)号」は約8500万円を投じ、日野自動車の「セレガ」をベースに開発。なの花交通バス(本社・千葉県佐倉市)に運行を委託した。

新型車の魅力を体感する試乗会に参加したのは6月下旬。

帝国ホテル東京(東京都千代田区)のバス乗り場に向かうと、差し込む太陽の光に反射してきらきらと輝く新型車が目に飛び込んできた。外観は深い緑色を基調に上品な濃紺色を加えたデザインで、そこから碧号と命名したという。

窓と足元に工夫

クラブツーリズムの職員が車体側面の扉を開け誇らしげに説明していた。同社としては初めて床下に各席専用の棚を設置。加えて冷蔵庫もあり、観光地で魚介類を買っても安心して保管でき身軽になれるという。全面革張りの座席に座ると高級ホテルのサロンにいるような感覚に包まれた。

海号と空号の定員が21人に対し、碧号は3人減の18人。その分ゆとりができ、シートピッチ(前席と後席との距離)は128.5センチに増えた。頭上には視界を遮る荷物棚がなく、天井まで大きな窓が広がっていた。

都内のオフィス街を走り抜け港区の東京プリンスホテルで折り返す往復30分ほどの短い旅だったが、車窓の景色を満喫できた。

「一番のこだわりは足元に設けた木製の手荷物置き。手の届く範囲に荷物を置きたいという顧客の声に応えた」と、同社バス仕入・開発センターの桑原雅弘所長は明かす。

手荷物置きは、テーブルとしても使える同社初の装備で、足が伸ばせるよう空洞になっている。強度の高い高級家具材として使われる国産の木材「タモ」を採用。部材の角を丸くするなど細部の安全性にも配慮した。各座席には「国内の観光バス業界で初めて」というタブレット端末も1台ずつ設置されていた。

端末では、添乗員が撮った写真を閲覧できるほか、車内の専用プリンターで画像をプリントアウトすることも可能。添乗員の操作に合わせて乗客全員の画面も変わる仕組みもあり、目的地の観光情報を共有するといった応用が考えられるという。

こうした特徴を生かした旅行商品の展開に注力し、碧号の利用客で年間約5400人の獲得を目指す。さらに、碧号と同じタイプを関西や東海に導入予定だ。

四季の華を担当する藤木志穂リーダーは「居心地のいい空間での移動を目的に高級バスを選ぶリピーターも多い」と手応えをつかんでいる。利用客の約8割がシニアで、旅慣れた中高年をあきさせない企画の切れ目のない提案が人気の定着につながった。

増える競合相手

ただ、旅行会社やバス会社から高級バスツアーが続々と登場。特に、JTBグループの「ロイヤルロードプレミアム」や三越伊勢丹旅行の「プレミアムクルーザー」との間で顧客争奪戦を繰り広げている。鉄道各社も豪華仕様の列車で富裕層の獲得を加速しており、競争は一段と激しさを増している。

クラブツーリズムの中村朋広・執行役員テーマ旅行部長は「(車両や装備を競う)ハード面の競争はイタチごっこでいずれ差別化に限界が出てくる」と指摘。「本当に価値あるテーマ型の旅行商品を提供しないと生き残れない」と気を引き締める。

クラブツーリズムは13年、近畿日本ツーリスト(本社・東京都千代田区)と経営統合し、持ち株会社KNT-CTホールディングス(本社・東京都千代田区)の傘下に入った。添乗員が付くパッケージツアー(募集型団体旅行)で実績を積むクラブツーリズムと、募集型個人旅行の手配を主力とする近ツー。両社間でシナジー効果を最大限に引き出すことが喫緊の課題の一つだ。

高級バスは、旅行者を受け入れる地域で作る着地型商品やテーマ型商品の提案力を高める手段の一つでもある。将来的にはクラブツーリズムと近ツーがバスを共有したり、ツアーを共同で企画し拡販したりするといった展開も視野に入れている。

人口減少で競争が熾烈(しれつ)になる中、差別化した企画で豊富な個人資産を持つシニア層の消費をどのように呼び込むか。新たな歴史を刻み始めたクラブツーリズムの今後が注目だ。(臼井慎太郎)

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