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高まる中国クルーズ熱 顧客争奪戦 国内企業、造船会社も参入

2017/07/18

米ロイヤル・カリビアン・クルーズやカーニバルといった世界のクルーズ各社は、中国市場のさらなる可能性を見込んで、より豪華な客船を黄海に送り込んでいる。中国市場に特化した商品を提供し、クルーズは単なる移動手段ではないと中国人旅行客の意識改革を進めることで市場拡大を狙う構えだ。(ブルームバーグ Dong Lyu)

客の嗜好を研究

201707181332_1-300x0.jpg香港の啓徳クルーズターミナルに停泊する、ロイヤル・カリビアンの豪華客船「オベーション・オブ・ザ・シーズ」(ブルームバーグ)

屋内スカイダイビング施設やロボットバーテンダーも完備した、ロイヤル・カリビアンの最新鋭大型クルーズ客船「オベーション・オブ・ザ・シーズ」(最大定員4905人)は、夏季シーズンの運航に向けて5月に母港の天津に配船された。甲板にはパンダの親子の巨大オブジェもある。
【関連サイト】ロイヤル・カリビアン・クルーズ

「オベーション・オブ・ザ・シーズ」で提供される食事からエンターテインメントまで、あらゆるサービスは中国人の嗜好(しこう)に合わせようと工夫されている。ロイヤル・カリビアンのアダム・ゴールドスタイン社長は「朝食におかゆ、昼食や夕食に魚介を食べるにせよ、彼らは中国本場の味にこだわる」と語る。

ショッピングは注力している分野の一つで、船内店舗での中国人の買い物代は他国の2、3倍に及ぶという。船内娯楽では、他の地域では大好評のブロードウェー風ショーの代わりに、中国で人気の曲や人物が登場する。

ロイヤル・カリビアンと競合する上海のクルーズ会社、スカイシーが運航する「ゴールデン・エラ号」では、国民的な音楽オーディション番組の優勝候補者が招かれて歌声を披露し、ミス中国を決める美人コンテストの最終選考会も開催された。スカイシーのケン・マスカット最高経営責任者(CEO)は「どの会社も中国市場が求めているものを研究しアレンジしている」と指摘する。

中国人クルーズ客の最大の特色は、数世代の家族ぐるみの旅だということだ。「彼らは家族志向が非常に強く、多くの時間を家族と過ごしたいと思っている」(マスカット氏)

北京在住のリュー・ジンさん(57)は、朝7時に起き、84歳の母親と2歳の孫の食事の面倒を見た後、孫が遊具施設で遊ぶのを見守って日中を過ごす。昼食や昼寝を挟んで、夕方に少しテレビを見る。孫の育児に積極的な中国の退職者にとっては珍しくもない光景だ。

しかし、これは、イタリアの豪華クルーズ船「コスタ・アトランチカ号」に乗船中のリューさんのある1日だ。「コスタ・アトランチカ」はプールや麻雀(マージャン)、ショーにカジノとアクティビティや娯楽が満載だが、「そうしたことを試す時間がない」とリューさん。彼女は夫と孫、母親とともに天津の港から乗船した。「船内を見渡すと、私のように幼児を連れた中高年ばかりだ」

20年には450万人

海外クルーズ会社は、こうした中国人乗客の独特のニーズを満足させるという課題に加え、中国企業による国産大型クルーズ船の建造という新たな脅威にも直面している。

中国人乗客を誘致する戦略においては、中国人消費者の好みの変化に敏感な地元のクルーズ会社の方が有利かもしれないと、中国のオンライン旅行予約サービス「途牛」の于敦徳CEOはみている。

中国のクルーズ会社や造船会社も大型クルーズ市場に参入している。2月に調印された覚書によれば、中国船舶工業集団傘下の上海外高橋造船は造船大手の伊フィンカンティエリと提携し、中国市場向けの船2隻を建造する。4000人収容の第1船は2023年に竣工(しゅんこう)予定だ。中国人のクルーズ旅客数は5年間で10倍に増え、16年に約200万人に上った。政府予測では20年には450万人に達する。

だが、国内外のクルーズ会社にとって、中国周辺海域は地政学的リスクが高まっている場所でもある。ロイヤル・カリビアンとカーニバルは3月、米国の「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の韓国配備をめぐる中韓の緊張から、中国発のクルーズ船の韓国寄港を中止した。

とはいえ、そうしたリスクを背負ってもクルーズ業界は中国での事業拡大に意欲を見せる。既にクルーズ会社は未開拓市場にも目を向けている。それは空港や高速道路の増設によって利便性が向上した中国内陸部の都市だ。于氏は「そこまで市場を拡大できれば、クルーズ人口は何千万人にも増えるだろう」と予測している。

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