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高まる田舎暮らし志向 移住希望者向けに各地で見学ツアー セミナーも活況

2017/07/08

田舎暮らしを志向する都市部の移住希望者が増えている。受け入れ側の市町村も地方創生の有効策に位置付け、全国各地で見学ツアーが毎週のように開催されている。

1泊2日で農業体験

201707041207_1-300x0.jpg農業体験ツアーで田植えに挑戦する移住希望者=長野県伊那市

ぎこちない田植えの列が、にぎやかに、少しずつ進んでいく。「チームワークが大事。仲が悪いと曲がっちまうぞ」。地元農家がげきを飛ばす。

青空と新緑、遠く望む南アルプスの真っ白な残雪。見事なコントラストの下、ぬかるみに難渋しながらも皆いい笑顔だ。

6月最初の週末、長野県伊那市が催した1泊2日の「農業体験&空き家探訪」。中高年から子供まで県外の3世帯7人が参加した。

「いつかはと思っていた夢の第一歩として」「仕事も一区切りし、生活をリセットしたい」「長野が好きでよく来る。いっそ住んじゃおうかと」。動機は三者三様だ。

「移住希望者は農業を志す人ばかりではないが、土地と人を知ってもらえれば」と伊那市地域創造課主任の伊藤貴さん(33)。姉妹都市との交流事業に乗っかる形で企画した。

伊那市の人口は7万人弱。微減傾向が続いているが、転勤などを除く移住者は一昨年、昨年と80人超に。PRと助成金など各種受け入れ施策が奏功してきたと言える。

「うわー、すてき。本当に売るんですか」

2日目の空き家バンクの物件視察。中央アルプスと南アルプスを一望するしゃれた洋風2階建てに女性陣から声が上がる。手入れが行き届いた庭と家庭菜園もある約350平方メートルの敷地に築6年の総床面積93平方メートルで1890万円。相場より2~3割は安いという。

ほかに、広い畑に土蔵や農作業棟もある8DKの屋敷や、即入居可のリフォーム済み物件も格安で紹介。参加者は、周辺環境や買い物の便などを熱心に質問していた。

2日間の日程を終え、妻と小学6年の長男と参加した東京都の会社員は「息子の進学もあり、すぐには決断しにくいが、伊那の魅力はよく分かった」。愛知県からの夫妻は「環境も大事だが、決め手は人だと感じた。うまくやっていくために自分は何ができるか」と思いをめぐらしていた。

「都会の人が溶け込めるか心配だったが、なじんでくれたようだ。来てもらうイメージは湧いたかなと思う」。仕掛け人の伊藤さんは期待感を示した。

201707041207_2-300x0.jpgふるさと回帰支援センター」で開かれた岐阜県の移住セミナー=東京・有楽町

こうした体験イベントは、週末を中心に全国各地で開催されている。大都市にある自治体事務所や移住情報サイトなどで紹介しており、随時受け付けている。

移住希望者と自治体のコーディネーター役を担う認定NPO「ふるさと回帰支援センター」(東京都千代田区)。JR有楽町駅前の990平方メートルのフロアには自治体ブースがひしめき合い、相談員が常駐している。愛知県が7月に出展し、東京と大阪を除いた45道府県がそろう。

休日は自治体主催のセミナーなども相次いで開かれ、現地情報を求める人でにぎわっている。高橋公代表理事(69)は、移住志向の高まりを「若者の価値観の多様化が影響している」と分析。農業、趣味、子育てなど目的はさまざまに広がっているとして「一過性ではなく、当分は続くのではないか」とみる。

移住ブームに警鐘も

ふるさと回帰支援センターの2016年の来訪者は個人と世帯の合計が2万1452件で、08年の約12倍となっている。特にここ2、3年で急激に伸びた。年齢別では、08年に50歳以上が約7割だったのが、16年には逆に7割近くが50歳未満と若年化した。特に20~30代が顕著で、16%から46%と30ポイントも上昇している。

総務省が1月に実施した大都市住民の意識調査でも、移住希望者が重視する条件は「生活が維持できる仕事(収入)」が半数を超えており、現役世代の関心の高さがうかがえる。

移住ブームを受け、各自治体によるあの手この手のPR合戦の様相だが、筒井一伸鳥取大准教授(農村地理学)は「国全体が人口減の中で移住者の取り合いをしていては地方の明日はない」と警鐘を鳴らす。移住政策の成否は「人数ではなく、どんな人材が増えるかだ」として、地域コミュニティーが移住者を人材として受け入れる重要性を指摘している。

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