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アジアLCCで好調の関西空港、欧米路線は頭打ち アジア偏重に問われる存在意義

2017/07/01

関西国際空港を運営する関西エアポート(本社・大阪府泉佐野市)がさらなるアジア重視を打ち出した。関西は中国や東南アジアからの旅行者が急増していることに加え、ビジネスでもアジア志向を強めていることが背景にある。課題の欧米便は相次ぐテロの影響で増加の兆しが見えず、強化を一時棚上げする方針だ。ただ、アジア偏重は国際空港としての存在意義が問われるため、波紋も広がっている。(藤原直樹)

ビジネス埋まらず、お手上げ

201706271403_1-300x0.jpg関西国際空港のアジア重視を打ち出す関西エアポートの山谷佳之社長(左)とエマヌエル・ムノント副社長=5月31日、関空

関西エアポートの山谷佳之社長は運営開始から1年間の連結業績を発表した5月31日の記者会見で、「ライフサイエンス(生命科学)や食、スポーツなど関西が重視する産業の市場はすべてアジアだ。関空もそれに寄り添う空港でないといけない」と明言。アジア重視を鮮明にする関西財界や自治体と歩調を合わせる考えを明らかにした。

関空国際線の現行の夏季ダイヤ(10月28日まで)では、旅客便の就航便数が開港以来最多の週1126便となったものの、欧米便は週82便で全体の7%程度だった。一方で、ほとんどがアジア向けの格安航空会社(LCC)は週378便で全体の34%に上っている。

テロが多発する欧州方面は前年同期の週33便から26便に減少し、不振は深刻だ。関西エアポートは、航行距離3000キロ以上の新規路線は初年度の着陸料を無料にするなど長距離便の優遇策を打ち出すが、欧米便の新規就航の見通しは厳しい。

山谷社長は「関空発着では(航空会社にとって高収益の)欧米便のビジネスクラスの座席は埋まらない。急に需要が増えることはないだろう」と“お手上げ”の状況を説明した。

好調な1年目業績

関西エアポートがアジア重視を明確にしたのは、運営1年目が順調に進んだことが大きい。

関西エアポートの1年間の連結業績では、関空の旅客便拡大に加え、免税店や飲食店の売り上げも好調で、売上高にあたる営業収益は1802億円、最終利益は169億円となり、初めての通期決算で黒字を確保した。

昨年3月まで関空と伊丹空港を運営していた新関西国際空港会社の決算と単純に比較することはできないが、関西エアポートの試算では営業収益で前年を3.2%上回ったという。

関西エアポートはこの1年で、LCC専用新ターミナルへの投資を増額して最新の保安設備や回遊型の免税店を設置。関空内で働く人の子供たちのために保育所を開設し、深夜早朝便の利用客向けコンパクトホテル「ファーストキャビン」を誘致するなど、一定の成果を出した。

山谷社長は「世の中の動きに合わせて、引き継いだ予算に入っていなかったことにも臨機応変で対応した。好調な業績となったことで、関西エアポートとしての経営の方向性を示すことができた」と自信をみせる。

一丸になれるか

しかし、アジア偏重に対して旅行業界を中心に懸念も出ている。欧州向けツアーはリピーターが多いのが特徴で、旅程にはある程度の日数が必要なため1人当たりの単価が高く旅行会社にとっては主力商品だ。

大手旅行会社幹部は「関空で欧州線が減り続けると、東京経由のツアーを増やすしかなくなる」と嘆く。経済界からも「東京への一極集中が進む」との不安が高まっている。

関西エアポートに出資する仏空港運営大手バンシ・エアポートの手腕にも疑問の声が出始めている。バンシは路線開設のための専門チームを擁しており、緻密なマーケティングで需要予測を導き出して、航空会社に的確な提案を行うことを得意とする。

しかし、現状では欧米便で結果を出せていない。関西エアポート社内で、バンシ出身者と新関空会社から移ってきた社員との融合が進んでいないとの指摘もある。山谷社長は社内に摩擦があることを認めた上で、「よりよい組織に変わるために踏ん張って前に進んでいくしかない」と強調した。

アジア重視の戦略が吉と出るか凶と出るか。運営2年目以降の業績で判断されることになる。

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