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世界遺産登録から3周年、富岡製糸場で映画「紅い襷」完成披露 今秋公開、観光客減の歯止め期待

2017/07/01

「富岡製糸場と絹産業遺産群」がユネスコの世界文化遺産に登録されてから3年を迎えた6月25日、工女たちの人間ドラマを描いた映画「紅い襷(たすき)~富岡製糸場物語~」の完成披露試写会が群馬県富岡市の富岡製糸場内で行われた。今秋に劇場公開されるが、観光客を呼び込む“世界遺産効果”が急激に薄れてきている中、この映画が製糸場や絹遺産の価値を後世に継承し、客足減少に歯止めをかける材料となるか、期待がかかる。

日本の近代化の扉開いた製糸産業、工女たちの苦闘描く

201706271316_1.jpg映画「紅い襷~富岡製糸場物語~」の完成試写会。右から主役の横田英を演じた水島優さん、富岡市の岩井賢太郎市長、出演した福井リエさん=富岡製糸場(久保まりな撮影)

「紅い襷~富岡製糸場物語~」は明治6年春、父の反対を押し切り富岡製糸場に工女として入場した長野県松代区長の娘・横田英の手記を元に描かれた作品。日本政府に指導を託されたポール・ブリュナらフランス人の指導の下、英を始めとする工女たちが、工女の最上等級の証である「紅い襷」を付けられるよう、悪戦苦闘しながら日本の近代化の扉を開いていく―というストーリー。ドラマとドキュメンタリーが入り交じった映画となっている。

試写会には、関係者約120人が集まった。主演を務めた水島優さん(26)らも参加し、110分の上映後には会場から盛大な拍手が湧いた。

群馬県の大沢正明知事は「世界と富岡製糸場の関わりや、日本の中での存在価値など全てを描いてくれている映画。子供たちにも見てもらい、製糸場が世界の中でどう貢献したのか、伝承していってほしい」と話した。

このような後世に継承しようという動きがある一方、富岡製糸場の観光客数は急激に減少している。

世界遺産に登録が決まった平成26年度の観光客数は前年の約31万人から跳ね上がり約133万人。だが、27年度は約114万人、28年度には約80万人にまで落ち込み、世界遺産効果に陰りが見えている。

映画にエキストラで参加した富岡東高3年、武井花夏さん(17)は「地元に近代的なフランス風の建物が残っているのは貴重。この映画でもう一度、富岡製糸場が盛り上がってほしい」と今後に期待した。

映画は、7月2日に地元向けに先行上映会が行われ、10月7日から、高崎と前橋で劇場公開される。

観光客増だけが指標? 公開と保存のジレンマ

富岡製糸場の観光客減少には、産業遺産ならではの悩ましさもある。神社仏閣とは違い壮麗さが物足りず「眺めるだけでは面白みが少ない」(富岡市担当者)。さらに、国宝などの建造物は順次工事に入り、目玉施設が完全な状態で見学できるのは10年以上先という公開範囲の狭さも要因のひとつ。

担当者は「多くの人に見てほしいが、製糸場は大切に守っていく必要があり、保存修復には時間がかかる」と公開と保存の“ジレンマ”に複雑な心境をのぞかせた。

「観光客増加だけが喜びなのか」。高崎経済大の佐滝剛弘特命教授(観光政策)は同じ世界文化遺産に登録された「石見銀山遺跡」(島根県大田市)の例を挙げ説明する。

数キロを歩きガイドの話を聞く旅程が好評といい、佐滝氏は「周辺に若者が移住したり、店を開いたりと、持続可能な姿にたどり着いたようだ」と分析。「富岡も絹の専門家が集まる町を目指すことなどを考えてもいい」と観光だけに頼らない地域のあり方を提唱した。

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