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富岡製糸場、観光ブームに陰り「面白み少ない」 市は公開と保存の“ジレンマ”

2017/06/22

2014年6月の世界文化遺産登録から3年を迎える富岡製糸場(群馬県富岡市)の観光ブームに早くも陰りが見え始めている。当面の年間入場者目標を100万人としていたが、16年度に大きく割り込んだためだ。世界遺産を核とした地域振興をめぐり、市は模索を続けている。

201706221130_1-300x0.jpg群馬県富岡市の富岡製糸場

05年10月に公開が始まった富岡製糸場の入場者は、世界遺産の暫定リストに記載後、20万~30万人に増加。登録の14年度には約133万人に跳ね上がった。

市は16年3月、10年後の年間目標を100万人とする計画を発表したが、その後の減り具合は予想を上回り、16年度は約80万人。維持管理などに年10億円前後を投じる市が採算の目安とする水準まで落ち込んだ。

産業遺産ならではの悩ましさもある。神社仏閣とは違い壮麗さが物足りず「眺めるだけでは面白みが少ない」(担当者)からだ。満足度を上げるため、歴史背景や遺産としての価値を紹介するガイドツアーに力を入れる。ただ、公開範囲が狭く混雑しやすいためか、足早に通り過ぎる客も目立つという。

現在公開しているのは敷地の3分の1程度。国宝などの建造物は順次工事に入り、目玉施設が完全な状態で見学できるのは10年以上先だ。担当者は「多くの人に見てほしいが、製糸場は大切に守っていく必要があり、保存修復には時間がかかる」と公開と保存の“ジレンマ”に複雑な心境をのぞかせた。

一方で、製糸場を地域活性化の核にという期待は市内外から集まる。群馬県は、一緒に登録された周辺の絹産業遺産群の魅力を伝える展示施設を18年度にも製糸場近くに設置。製糸場以外は市外にあり、足を延ばす観光客が少ないためだ。

製糸場や絹産業と縁のある群馬、埼玉両県の7自治体も昨年「上武絹の道運営協議会」を設立。県を超えた観光圏づくりを目指している。

外国人観光客向けに免税導入したものの…

富岡市でも外国人観光客向けの免税を導入したが、16年度の利用者はわずか14人。数千円で宿泊できるゲストハウスの整備など市内への経済波及に取り組むが、周囲の期待との板挟みになっているともいえそうだ。

「観光客増加だけが喜びなのか」。高崎経済大の佐滝剛弘特命教授(観光政策)は同じ世界文化遺産に登録された「石見銀山遺跡」(島根県大田市)の例を挙げ説明する。

07年に登録後、周辺の構成遺産を含め年間来訪者が推計値で約80万人に倍増。2年後には約50万人に減ったが、ガイドの話を聞く旅程が好評という。佐滝氏は「周辺に若者が移住したり、店を開いたりと、持続可能な姿にたどり着いたようだ」と分析し、「富岡も絹の専門家が集まる町を目指すことなどを考えてもいい」と観光だけに頼らない地域の在り方を提唱した。

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