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韓国に進出した「日式IR」 韓流カジノと違うグレード「ロッテグループもここまでやらない」

2017/05/08
201705081237_1-300x0.jpgパラダイスシティ内に開業した外国人専用カジノ。韓国最大級の規模を誇り、アジア圏全体からの集客を目指す=4月20日、韓国の仁川広域市(佐久間修志撮影)

韓国の仁川国際空港近くに日本のセガサミーホールディングス(HD)(本社・東京都港区)と韓国パラダイスグループが共同開発した韓国初の統合型リゾート施設(IR)「パラダイスシティ」がオープンした。日本国内のIR解禁が間近に迫る中、セガサミーはパラダイスシティを熾烈(しれつ)な市場争奪戦のカギとなる運営ノウハウを積み上げる実験装置としたい考えで、パラダイス側も「日式IR」が韓国観光業界の活性化につながると期待する。この注目施設を歩いた。

パラダイスシティは仁川国際空港に隣接する33万平方メートルの敷地内に立地しており、15分ごとに空港から運行する直通バスを使えば5分で到着する。高級感あふれる外観で、開業日の4月20日には、施設内の五つ星ホテルに高級車が次々と横付けされ、招待された韓流スターを待つファンまでが押し寄せており、スタッフが交通整理を余儀なくされるシーンもみられた。

約1兆3000億ウォン(約1240億円)を投じた施設はホテルや外国人専用カジノ、商業施設などで構成されるが、今回は第1弾として計711室の高級ホテルとカジノ、参加者1000人の晩餐(ばんさん)会に対応するコンベンション施設を開業。来年には商業施設や温浴施設、テーマパークなどがオープンする。

収益の中心を担うカジノの入り口はホテル中央部にあった。韓国最大級となる約1万5000平方メートルの施設面積に158台のテーブルゲーム、291台のスロットマシンを設置し、プレオープンの前日からもバカラなどに興じる来場者がいた。韓国ではこれまでに17カ所ものカジノが運営されているが商業施設などと一体のIRは初めてという。

日本市場解禁を見据えて開発したセガサミーHDの里見治会長兼最高経営責任者(CEO)が、これまでの“韓流”カジノとの差別化ポイントとして挙げたのは「想像を超えたハイグレードさ」だ。

高級ラウンジを思わせるVIP専用の「スカイカジノ」だけでなく、一般客用のフロアにも多数の日本人スタッフを配置。来場者に丁寧に声がけして不自由さを感じさせないなどのサポートを実施していた。加えて「見れば分かる」と里見氏がアピールするのは「清潔感も含めて働く女性のクオリティの高さ」だ。

このほか世界的アーティストの作品を含めた2700点の美術作品を施設内に配置し、ホテル最上階にある368平方メートルの最高級スイート、ミシュランで評価されたレストランなど高級感にこだわり抜いた。共同開発したパラダイスの関係者は「あのロッテグループでもここまではやらない」と舌を巻く。この徹底した高級志向は一般の中国人観光客をターゲットにした韓国の観光業界には到底、踏み込めないリスク領域なのだという。

だがパラダイス側も、今では日本企業が主導する高級路線に光明を見いだす。中国で韓国旅行商品の販売が中断された影響で、韓国では中国人観光客が激減、観光業界は苦境が続く。パラダイスシティは一般の中国人団体客に頼らない新たなビジネスモデルとなる可能性を秘めており、パラダイスグループの田必立会長は会見で「今までの韓国カジノはスーパー。ここはショッピングモール」と“日式”を持ち上げた。

この全面バックアップを受け、セガサミーは今後、安倍晋三政権が目指す「日本型カジノ」への対応を模索していくことになる。家族連れも楽しめて、クリーンなカジノ。パラダイスシティをパイロットファームとしてあらゆるサービスの可能性を探っていく。

すでにいくつかの仕掛けは始まっていた。パラダイスシティの高級ホテルはレッド、パープル、ゴールドの3棟をつなぐ構造だが、カジノ客が宿泊するゴールドと家族連れを想定したパープル、コンベンション利用者向けのレッドはすみ分けられ、子供がカジノに迷い込まない仕組みだ。キッズルームや日本のゲームコーナーも充実。来年開業するテーマパークには「ファミリーも楽しめるセガサミーらしいコンテンツを盛り込む」という。

日本国内におけるカジノ自体のグレーなイメージ払拭にも手をつける。里見氏が開業会見後に報道陣に明かしたのは「ディーラーも含めて不正の出ないシステムの開発」だ。具体的には明かしていないが、マネーロンダリング(資金洗浄)も含めて防げるという。あとは百聞は一見にしかず。日本人観光客を「最も近い外国」に呼び込み、イメージ改善に向けた旗振り役も買って出る構えだ。

経団連の試算によると、日本におけるIR1カ所当たりの需要創出効果は年間約5800億円。セガサミーHDは収益性の高いIRを含むリゾート事業を収益の柱に育てていく考えで、本国での大一番を前に、ラスベガスやマカオで実績のある外資系運営会社に立ち向かうべく、着々と牙を研いでいく。(経済本部 佐久間修志)

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