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外国人観光客をターゲットに数珠やお札売りつけ 中国人ニセ僧侶、世界にネットワークか  

2017/04/26

丸刈りに法衣を着こみ、繁華街の雑踏で寄付を募る謎の僧侶…。その正体は人の善意を食い物にする不届き者の外国人だった。警視庁が入管難民法違反(資格外活動)容疑で逮捕したのは中国籍の男(54)。外国人観光客に狙いを定め、二束三文で仕入れたお札や数珠を30倍以上の値段で売りつけていた。“ニセ僧侶”は世界中で確認されており、捜査当局は組織的関与があるとみて調べを進めている。

「寺の建立のため」 寄付金を募る謎の僧侶

201704261417_1.jpgJR秋葉原駅近くの電気街。行き交う外国人観光客にニセ僧侶が声を掛けていた=東京都千代田区

「ハロー」

東京都千代田区のJR秋葉原駅前。今年2月、行き交う外国人観光客に声を掛ける男の姿を警視庁の捜査員は捉えていた。

法衣のような衣装を身にまとい、頭を丸めたその姿は一見すると「僧侶」。

足を止めた観光客に男はカードを示した。

「ブッダのお寺の建立を手伝ってください。ブッダはあなたに平和と幸福、安心をもたらします」

カードには仏像の写真とともに、英文でこんな文言が記されていた。男は観光客にノートへの記帳を求める。そこには複数の署名が記載され、その横には「1万円」「2万円」などと金額が羅列されていた。

「寄付を募っているのだろう」―。外国人観光客が財布を取り出すと、男はすかさずカバンから取り出したプラスチック製の数珠とお札を手渡した。

「僧侶を装って物を売っている中国人がいる」

こんな内容の複数の110番通報を受けて、現場に駆けつけた捜査員が声を掛けると、その正体はすぐに明らかになった。

本当の職業は「農業」 食費を稼ぐため“僧侶”に

男は「短期滞在」の在留資格で来日した54歳の中国人だった。「僧侶のふりをしているが、仏門とは全く無縁で自分の職業について『農業』と明かした。外国人観光客に手当たり次第に声を掛け、数珠やお札を売り回っていた」(警視庁幹部)。

「短期滞在」の在留資格は、90日以内の滞在は認められているが、路上販売など報酬を得る活動は禁止されている。

警視庁組織犯罪対策1課は、男が職務質問を受けた後の2~3月にも同様の行為を都内で繰り返していたことを確認。入管難民法違反(資格外活動)の疑いで逮捕した。

「男はおよそ1カ月の間に、英国からの観光客ら10人に数珠11個、お札9枚を500円~1000円で売り回っていた」(同)。

捜査関係者によると、お札や数珠は男の地元である中国・浙江省の雑貨店で1元(当時のレートで16円)~2元(同32円)で仕入れていたという。安価で仕入れた“商品”を仕入れ値の30倍以上もの高値で売り払っていたことになる。

男は組対1課の調べに対し、「食べる物を買うお金を稼ぐために僧侶のふりをした」などと供述した。

捜査関係者によると、男は昨年4月にも来日。韓国にも4回ほど渡航し、“ニセ僧侶”稼業を続けていた。これまでに1日平均2000円を売り上げ、計10万円の利益を得ていたという。

都内各所に出没 さらに世界中にも…

実は今回、警視庁が摘発した男以外にも“ニセ僧侶”は数年前から都内のあちこちに出没しており、一部で話題になっていた。

「これまでに『花見の名所』として有名な上野公園や、若者に人気の原宿・竹下通りなどでその姿が多く確認されている。いずれも外国人観光客に人気のスポットで、仏教や日本の国内事情に疎い彼らを集中的に狙った可能性が高い」(先の警視庁幹部)。

インターネット上では、「ニセ僧侶が托鉢(たくはつ)詐欺」「ニセ僧侶が外国人旅行客相手に募金詐欺」などの書き込みが続発。ツイッターで「僧侶風の人物に注意」などと呼び掛ける投稿も相次いでいた。謎の僧侶は、日本以外にも米ニューヨークや豪州、中国・上海など世界各地でその存在が確認されていた。

2015年6月には、中国系ニュースサイトが、「ニューヨークのマンハッタンの中心街に出没したニセ僧侶が金品をだまし取る」などと題した記事を配信。通行人に「寺の建立のため」などと称して寄付金を募るケースが多く、「ニセ僧侶ではないか」との疑惑が絶えなかった。

組対1課幹部は、「逮捕された男が単独で犯行を思いついたとは考えにくい。組織の関与があるとみるのが妥当だ」と指摘。今回の事件をきっかけに「ニセ僧侶集団」の実態について解明を進める構えだ。

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