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万博誘致識者に聞く(下)吉見俊哉・東大教授「1970年と根本的に違う祭典に」

2017/04/27

―2025年大阪万博計画の会場予定地である大阪湾の人工島・夢洲(ゆめしま)には、カジノを含めた統合型リゾート(IR)の開発も計画されている

201704251333_1-300x0.jpg「これまでにない万博を」と話す吉見俊哉・東大大学院教授

―1970年に開かれた大阪万博の熱気を再現しようという期待もある

「いまは時代が違う。70年万博が成功したのは、高度成長で日本経済が押し上げられ、頂点に達した時期とぴったりと一致したから。万博だから成功したわけではない」

―今の日本経済は成長が緩やかだ

「2005年の愛知万博のときも、すでに高度成長は終わっていたため、それまでの万博を否定して新しいモデルの確立に取り組んだ。万博はそもそも欧州が経済成長期だったときに生まれたイベントだから、成長が鈍化するとそぐわなくなる。世界的にも、地域開発との両立を狙う従来の万博の手法は意義を問われている」

―従来型の万博はどうなったのか

「95年開催予定だったウィーン万博(オーストリア)とブダペスト万博(ハンガリー)は中止。2000年のハノーバー万博(ドイツ)は開催前に国民投票が行われ、開催賛成が上回ったが僅差だった。東京で1996年に開催予定だった世界都市博覧会も中止となった」

―現代の万博とは

「2020年東京五輪がさまざまな困難に直面しているのは、1964年東京五輪の発想をひきずっているから。当時のスローガン『より速く、より高く、より強く』に象徴される価値観は、今ではピンとこない。現代は、生活の質を追求する『より愉(たの)しく』、環境の変化に強い『よりしなやかに』、持続可能な発展の『より末永く』、多文化共生の『ダイバーシティ』がキーワード。この4つは地球全体の関心事だ。万博を開くなら、少なくとも百年、2百年のスケールでグローバルな課題を考える必要がある」

―次の大阪万博に求められることは

「テーマは『いのち輝く未来社会のデザイン』だが、単に生命科学や環境工学の展示場にすべきではない。万博は産業の祭典であり、文化の祭典でもある。70年の大阪万博では故・岡本太郎氏ら先鋭的なアーティストが参加した。魅力的な万博にするためには、主催者側に『これまでとは根本的に違うものを作りたい』という明確で強い意思が必要だ」

(聞き手 栗井裕美子)

よしみ・しゅんや 昭和32年、東京都生まれ。56年東大教養卒。同大新聞研究所助教授などを経て、平成16年から同大大学院情報学環教授。文部科学省日本ユネスコ国内委員会委員も務める。共編著「市民参加型社会とは 愛知万博計画過程と公共圏の再創造」(17年、有斐閣)、「万博と戦後日本」(23年、講談社学術文庫)など。

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