Logo sec

宿泊、駐車場、別荘…京都市が検討する観光客対象新税の成否 「古都税」頓挫の悪夢再来も…

2017/04/14

京都市が新たな税の導入を検討している。好調な観光関連を対象に課税することを想定しており、「宿泊税」「駐車場利用税」「別荘税」が候補にあがっている。有識者らでつくる検討委員会は今年夏ごろをめどに市に対して答申を行う予定だ。だが、市では過去に、「古都税」を創設しながら有名寺院の猛反発でわずか3年で廃止となった苦い経験がある。専門家も「観光へのメリット、デメリットを考えた上で課税することが重要だ」とする。

古都の魅力、税収では弱みに?

201704142202_1.jpg観光客でにぎわう清水坂。外国人を中心に観光客が増加しているため、京都市は観光関連を対象に新税を検討しているが…=京都市東山区
「何をするにも財源が必要。京都の魅力を将来にわたって維持・発展させていくためにどのような財源確保の可能性があるのか、議論していただきたい」

京都市の門川大作市長は昨年8月に開かれた「京都市住みたい・訪れたいまちづくりに係る財源の在り方に関する検討委員会」の第1回の会合でこう述べた。

市が新税を導入しようとする理由の一つは、「厳しい財政状況」だ。

検討委によると、京都市は、

  1. 風情のある街並みをつくる京町家など古い木造家屋や低層の建物
  2. 知の集積である大学や歴史を積み重ねた寺院・神社
  3. まちづくりの大きな力になる大学生

―という特徴がある。

だが、こうしたことは税収面でみると「逆に弱みになっている」という。古い家屋や低層の建物は固定資産税の評価が低くなり、大学や宗教施設はそもそも同税は非課税。大学生は基本的に収入に乏しいため個人市民税が少なくなる要因というのだ。

もう一つの理由は「好調な観光」。近年、京都への観光客は外国人を中心に増加している。このため、宿泊施設の不足や道路渋滞の解消、多言語への対応などの環境整備の必要性が高まっているとし、新たな財源を確保して観光振興や渋滞の緩和策などに活用しようという狙いがある。

そして、観光関連の環境整備に財源を投入するのなら、受益者負担の考え方から、観光客にも一定の負担を求めていくのは合理性があるとし、観光関連への課税が検討された。

3案に絞り込み検討へ

こうした前提などから検討委では、税負担を求めるケースとして以下の6つが提案された。

  1. 駐車場への駐車
  2. 市バス・地下鉄の1日乗車券の購入
  3. レンタサイクルの利用
  4. 宿泊
  5. 別荘の所有
  6. 世界遺産の周辺地域への立ち入り

これらについて、政策目的の達成につながるものか▽公平であるか▽対象者に税の負担能力があるか▽ある程度の財源が確保できるか-などの観点から検討。

その結果、今年1月に出された検討委の中間取りまとめでは、駐車場への駐車▽宿泊▽別荘の所有-の3案を中心に、実現の可能性や具体的な制度について議論していくことになった。

他の案と比較して、負担を求める目的や趣旨が明確で、他の自治体での導入事例があることが理由だ。

太宰府は駐車場税、熱海では別荘税

では、他の自治体を見てみよう。

宿泊税は東京都と大阪府が採用している。

平成14年度に導入した東京都は「1人1泊1万円以上1万5000円未満の場合は100円」などの内容。今年1月に導入した大阪府は1人1泊「1万円以上1万5000円未満は100円」「1万5000円以上2万円未満は200円」「2万円以上は300円」となる。

一方、駐車場税は、福岡県太宰府市が15年5月、太宰府天満宮周辺の交通渋滞緩和や観光施設整備を目的に導入した。正式名称は「歴史と文化の環境税」。月ぎめや店舗以外の駐車場について、駐車1回ごとに普通車100円、大型バス500円、バイク50円などを徴収している。

別荘への課税は、保養地・観光地として有名な熱海市(静岡県)。歴史は古く、昭和40年代後半から一戸建の別荘やリゾートマンションの建設が相次ぎ、生活関連施設(ごみ処理、屎尿処理、上下水道の整備)や消防・救急車の整備などの経費が増大したことから、51年から「別荘等所有税」を課税している。

宿泊税は業界も容認姿勢

こうした中、京都市で有力視されているのは「宿泊税」だ。

理由は、課税対象がホテルなどの宿泊者であるという明確さに加え、税収の見込みが立つということがある。

京都市内の平成27年の延べ宿泊客数は2091万人だった。すでに宿泊税を導入している東京都などと同水準の1人1泊100~300円を宿泊税として徴収した場合、税収は年間20億円ほどを見込むことができる。課税対象が分かりやすく、税を集めやすい。検討委からは「簡易宿泊所や民泊なども対象にしては」といった声も出ている。

さらに検討委が2月、関係する業界団体に対してヒアリングを行ったところ、感触は上々。京都府内のホテルや旅館などでつくる京都府旅館ホテル生活衛生同業組合などは、「観光振興への使途の明確化」や「違法営業の多い民泊との公平性の確保」を条件に、容認する方針を示した。

廃止に追い込まれた「古都税」の記憶

その半面、「別荘所有税」と「駐車場利用税」は関係者の賛同を得られていない。

不動産関係団体などは「課税対象者の線引きが困難」「固定資産税と二重課税になる」などと反対。特に駐車場利用税では、業界団体が意見書で「営業車などには過度の徴税となり公平性に欠ける」などと異論を述べているが、その中ではこうも触れていた。

「神社仏閣が経営する駐車場から徴収する場合、記憶に残る『古都税』と同様の反対騒動が勃発(ぼっぱつ)しないか心配だ」

古都税―。京都市と仏教会が鋭く対立するきっかけとなった代物だ。

昭和57年、京都市が文化財保護の財源として充てるためとして、観光社寺の拝観料に上乗せする形で課税する「古都保存協力税」(古都税)の構想を打ち出したことに、「信教の自由を侵す」と猛烈な反発が起き、対立が勃発。市は60年に古都税の導入に踏み切ったが、有名寺院などが拝観停止で対抗し、わずか3年後の63年に廃止した。

この古都税について、検討委では「税の負担能力という観点からは適正な課税ではなく、信教の自由や政教分離の観点からも検討が必要であったと考えている」と総括。やはり新たに税負担を求めるには論点が少なくシンプルなものが良いとの考えのようだ。

難しい線引き、民泊どうする

経済効果に詳しい関西大の宮本勝浩名誉教授は「観光関連への課税にはメリット、デメリットがある」とした上で、「京都は世界から観光客が訪れる。『税金を取るから行くのを止めた』とはならないだろう」とブランド力の高さを指摘。「道路や駐車場の整備などの観光振興に使える安定的な財源となるだろう」と予測する。

「宿泊税が一番やりやすいだろう」とするが、「『民泊』を取り込むかどうかなど課税対象の選別が難しい。対象が増えればそれだけ人件費などの徴税コストがかかるし、宿泊規模の線引きによっては不公平感が生まれるかもしれない」と述べ、慎重な仕組み作りが求められるとしている。

あわせて読む

「行政」の記事をもっと見る 「宿泊」の記事をもっと見る

京都市

もっと見る
「京都市」の記事をもっと見る

訪日プロモ

もっと見る
「訪日プロモ」の記事をもっと見る