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[連載]観光立国のフロントランナーたち JATAアウトバウンド促進協議会 菊間潤吾会長(1)

2017/04/17
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今春からは日本インバウンド連合会の理事長にも就任した、ジャパンインバウンドソリューションズ(JIS)の中村好明社長が、日本の観光立国実現に奔走するキーマンたちと、その道筋について語り合う大型対談「訪日ビジネス最前線 観光立国のフロンティアたち」。今回は、一般社団法人日本旅行業協会(JATA、事務局・東京都千代田区)が日本の海外旅行振興を目的に今年2月に設立したアウトバウンド促進協議会の菊間潤吾会長をゲストに招きました。

日本では海外からの訪日客獲得に力を入れていますが、一方で、日本人の海外旅行は2012年をピークに低迷が続いています。促進協では、政府や観光関係業界からメンバーを招き、海外旅行低迷に歯止めをかけるための対策に取り組みます。インバウンド振興は一見、相反するようにもみえますが、アウトバウンド振興とは関係深い面もあります。菊間会長から促進協の取り組みなどについてお話しをうかがいます。

■低迷する日本人の海外旅行…復活を目指して

中村 JATAがアウトバウンド促進協議会の活動を始められましたが、その背景や狙いについてお聞かせください。

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菊間会長 背景のひとつは時代がインバウンドに傾きすぎていて、アウトバウンドに対して、もう一度関心を持たないとまずいのではないかという危機感です。昔は諸外国の観光局や大使館の観光行政官の方々は日本中心にプロモーションをしていました。しかし、今は、韓国や中国にターゲットが移っています。観光局の事務所も日本を閉めて、中国に展開するという時代に変わってきました。その中でもう一度、「日本は軽視すべき市場ではない」ということを海外にアピールしていく必要があると考えました。

もう一つは、インターネットのみで旅行の取引をするOTA(オンライン旅行会社)が拡大する時代になって、既存の旅行会社の存在をどうやって示していくのかという課題もありました。そういう事を考えると、旅行会社が今まで以上にプロの商品、プロ的な知識を持ってやっていかないといけません。単にホテルや航空機の手配だけをやるだけでは、旅行会社不要論といいますか、消費者が旅行会社からは離れていく時代が来てしまいます。そうなる前に社員のスキルをアップさせないといけないし、諸外国ともっと緊密な連絡体制を持たないといけません。

その一方で、諸外国の観光局も日本からの観光客を誘致したいと考えています。しかし、どこにアプローチしていいのか分からないという声もありました。外国の観光行政の担当者と、日本の旅行関連業界のキーパーソンが情報交換する場を設けることで、斬新で魅力のある商品・サービスを提供するなどアウトバウンドの振興につなげることを狙っています。

日本人の海外旅行者数 2016年の日本人出国者数は約1711万人で前年比5.6%増加した。為替相場が円安に推移したことなどから、2012年の1848万人をピークに3年連続で減少していたが、4年ぶりにプラスに転じた。

■各国の政府観光局、在日大使館も巻き込み、振興策を検討

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中村 海外旅行低迷という旅行業界全体が抱える課題を解消しなくてはならないという意味では重要なお仕事ですね

菊間会長 海外旅行の復活、OTA時代が来ても旅行会社の存在感が示せる商品作りということはJATAの一番大きなテーマでもあります。JATAの田川博己会長(JTB会長)は、ふだんから「『企画力』『添乗力』『斡旋(あっせん)力』が、旅行会社生き残りのキーワードだ」という話をしています。

JATAでは世界最大級の旅行展示会イベント「ツーリズムEXPOジャパン」を開催していますが、ツーリズムEXPOでは、これまで以上に企業・団体間のビジネス連携を強化していきたい。それを現実に具体化するためにどういう取り組みをしたらいいのかを協会で検討する中で、観光局や海外のサプライヤー、大使館、旅行会社などが一体となった組織を作っていくことになったんです。諸外国は、中国や韓国に注目していますが、幸いなことに改めて日本のマーケットを再認識する傾向も出ています。旅行市場という意味では、他のアジアの国々に比べても安定性はありますから。

中村 国際問題などで日常が左右されないということですね。

菊間会長 その通りです。欧州諸国では、日本人の観光客に違和感をあまり持たなくて、国民が歓迎しているんです。日本以外からの国の中には、観光客の中には、マナーの悪さなどさまざまな理由から歓迎されないところもあります。

また、日本もそうなのですが、観光を通じた経済の活性化を考えたときに人気の観光地、あるいは都市観光といったものだけではなく、地方各地に観光客を誘致したいわけです。すると日本のような成熟した市場ではそれが可能なんです。まだまだアジアの他の国々は日本の20年前と同じ状況にあります。諸外国が安定的に観光を伸ばしていくときに当然ながら日本の市場に再注目しなくてはいけない。

各国の観光局や大使館などに、われわれもその点をアピールしていますし、「日本のマーケットは軽視できないよ」と訴えています。すると、大使館側も「どういうキーパーソンと取り組んだらいいのか」と相談に来られることもありました。彼らもこういう組織体ができることを求めていたんですね。

中村 期待されていますね。でも、こうした取り組みはJATAの中でこれまでもやってきたことではないのですか。

菊間会長 いや、実は、そういうわけでもないんです。JATAという組織体がやっている具体的な活動の場というと、「ツーリズムEXPO」くらいだったんです。私自身、ツーリズムEXPOの前身の旅博、その前の世界旅行博などのイベントで委員長をやってきました。会場を東京ビックサイトに移して、世界で2番目、3番目といわれるほどの大きなイベントに育ちました。しかし、現在の訪日旅行から国内旅行まで一緒にして、オールジャパンのイベントに育て上げたのはいいのですが、半面、諸外国からみると、国内旅行とインバウンド用のイベントにしかみられなかった。

中村 「ツーリズムEXPO」を始めることで、アウトバウンドの振興をもう一度しっかりと再構築する必要性に気づかれたのですね。

菊間会長 日本の海外旅行市場の出国率の低さを考えると、市場のポテンシャルは大きい。あるいは成熟したマーケットの魅力というものもあります。海外旅行客2000万人という共通のターゲットもあります。その実現のために、旅行会社だけでやっていても効果は低いので、大使館や観光局、サプライヤーや航空会社など、みんな一緒になった組織体で動いていこうと呼びかけています。

中村 JATAというのは、ある意味、イベント中心の活動だったのでしょうか?

菊間会長 いいえ。そういうわけではありません。消費者との間に入って、消費者保護の制度を整備したり、消費者の旅行業界に対する意見や問い合わせなどを受け付けたりしています。また、旅行関連の国家試験がありますよね。そんな取り組みもJATAがやっています。旅行業法の中にもちゃんと明記されている団体です。そして、中核は海外旅行なんです。

中村 しかし、今回設立されたアウトバウンド促進協議会のような形で明示的に打ち出すというのは、時代の流れの中で一歩踏み出す必要があったわけですね。

菊間会長 今まではJATAが主体となってすべて進めてきて、呼びかけをしていましたが、アウトバウンド促進協議会の組織は役員の中に大使館や観光局も入れています。「日本からのアウトバウンドがほしい」といった諸外国も一緒になった組織体としてやっていくんです。

中村 パブリックな構え方で、すごく新しい取り組みですね。

菊間会長 それぞれの国では予算の関係もあるでしょうから、JATAの予算で運営する形をとっています。

中村 メンバーシップを受け入れることによって、JATAとしてもより影響力を持ちうるということですね。

菊間会長 目標の2000万人に届けばいいというだけではなくて、届いた中において旅行会社の取り扱いのシェアがどのくらいかというのは旅行業界としては大きいことです。どういう勝ち方のプロモーションで2000万人を達成しつつ、旅行会社がしっかりしたポジションに乗せるかということはとても大事なことです。その点はわれわれがイニシアチブを持ってやっていかないといけないと考えています。(続く)

                  ◇

菊間潤吾(きくま・じゅんご) 1952年東京生まれ。独協大外国語学部ドイツ語学科卒業後、1975年ワールド航空サービス入社。1995年代表取締役社長。2013年から会長。世界各地へのユニークな旅をプロデュースし、旅行業界のパイオニア的プランナーとして知られる。主な著書に『大人が旅するオーストラリア』『マカオ歴史散歩』『中国の神髄』『ヨーロッパの田舎』『フランスの美しき村』『新モンゴル紀行』(いずれも新潮社)など。日本旅行業協会副会長兼海外旅行推進委員会委員長、キプロス共和国名誉総領事、全国公正取引協議会連合会副会長。

中村好明(なかむら・よしあき) 1963年佐賀県生まれ。ドン・キホーテ入社後、分社独立し現職就任。自社グループの他、公共・民間のインバウンド振興支援事業に従事。2017年4月、一般社団法人日本インバウンド連合会に理事長に就任。日本インバウンド教育協会理事。ハリウッド大学院大学および神戸山手大学客員教授。日本ホスピタリティ推進協会理事・グローバル戦略委員長。全国免税店協会副会長。みんなの外国語検定協会理事。観光政策研究会会長。一般社団法人国際観光文化推進機構理事。著書に『ドン・キホーテ流 観光立国への挑戦』(メディア総合研究所、2013 年)、『インバウンド戦略』(時事通信社、2014年)、『接客現場の英会話 もうかるイングリッシュ』(朝日出版社、2015年)、『観光立国革命』(カナリアコミュニケーション、2015年)、『地方創生を可能にする まちづくり×インバウンド 「成功する7つの力」』(朝日出版社、2016年)がある。

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